ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 教育にお金をかけない日本政府②-本当に日本政府は教育にお金をかけていないのか?
2011年09月17日 (土) | 編集 |
前回の続きです。メディアの論調では、日本のGDP比の公教育支出がOECD諸国の中で最低なのは教育に力を入れていない政府の責任、と言う感じでしたが果たしてそう言い切れるでしょうか?実は一概にそうとは言い切れません。GDP比の公教育支出は以下で紹介する4つの要因によって決定されるのですが、そのうちの2つは政府が教育に力を入れているかどうかとは無関係で、それらの要因によって日本のGDP比の公教育支出がOECD諸国の中で最低になっているとすれば、政府に非難を向けるのは誤りとなります。というわけで、早速GDP比の公教育支出の大きさを決定する4つの要因を紹介しようと思います。



政府の規模-大きな政府か小さな政府か?GDPと比較して政府の規模が大きいか小さいかはGDP比の公教育支出に影響を与えます。極端な例を出してみます。GDPと比較して政府支出が50%もある大きな政府Aとそれが1%しかない小さな政府Bがあるとします。政府Aは年金や公共工事に精を出して教育には政府予算の5%しか出さず、政府Bは教育命なので政府予算を全額教育に注ぎ込んだとします。教育熱心な政府は明らかにBです。しかし、GDP比の教育への公財政支出を見ると、

・政府AはGDP×50%(政府の規模)×5%(政府支出に占める教育支出の割合)=GDP比2.5%の教育に対する政府支出
・政府BはGDP×1%(政府の規模)×100%(政府支出に占める教育支出の割合)=GDP比1%の教育に対する政府支出

となります。かなり極端な例ですが、大きな政府(北欧諸国など)であるか小さな政府(アメリカ共和党など)であるかによって、GDP比の教育に対する政府支出は大きく変わってくるという事を分かって頂けたかと思います。そして、政府の規模の大きさは政府の教育に対する姿勢とはほぼ無関係なので、この項目によってGDP比の公教育支出が押し下げられているのであれば、政府の問題というよりも国民の政府に対する考え方の問題となってきます。

政府支出に占める公教育支出の割合-政府は何にお金を使っているか?①で触れた、GDP比の教育に対する政府支出の割合=政府の規模×政府支出に占める教育支出の割合、という事実からこの項目は導き出されます。ただし、こちらは①と違ってダイレクトに政府の教育に対する姿勢を示すので、この項目がGDP比の公教育支出を押し下げている場合、これは政府の教育に対する姿勢に問題があると言えます。

全人口に占める学生の割合―学生がいなければ教育のしようがない。少子高齢化もGDP比の公教育支出に大きく影響します。ここでも極端な例を出してみます。共に人口が1万人のA国とB国があったとします。Aは壮絶な少子高齢化で9999人は働いていて学生は1人しかいないのに対して、Bはベビーブームを迎えて5000人が働き5000人が学生だと仮定します。A国B国共に労働者は年に1万円稼ぎ、学生に対して政府は年1万円支出しているとすると、A国:GDP9999万円・教育費1万円、B国GDP5000万円・教育費5000万円となり、A国のGDP比の教育に対する政府支出は0.01%、B国は100%となります。国民が教育を受けるほど合計特殊出生率が下がるので教育と人口問題は無関係ではないのですが、この項目によってGDP比の公教育支出が低くなっていても、一応政府の教育に対する姿勢とはほぼ無関係だと考えられます。

学生一人当たり公教育支出―政府は学生一人当たりにどれだけお金を使っているか?③の裏返しなので、③と状況は同じなのですがA国政府は学生1人に5000万円も使用し、B国政府は学生1人に0.1万円しか使わなかった仮定します。A国はGDP9999万円・教育費5000万円、B国はGDP5000万円・教育費500万円となり、A国のGDP比の教育に対する政府支出は約50%、B国は10%となります。この項目は③と異なり政府の教育に対する姿勢を示すので、この項目によってGDP比の公教育支出が低くなっている場合、政府は教育に対する熱意がないとみなす事ができます。

長くなりましたが、簡潔にまとめるとGDP比の公教育支出は
①GDP比の教育に対する政府支出の割合=
政府の規模×政府支出に占める教育支出の割合
②GDP比の教育に対する政府支出の割合=
(GDPと比較しつつ)学生の人数×学生一人当たりの政府予算

という2式で表現され、うち2項は政府の教育に対する姿勢とは無関係に決まってくるので、GDP比の公教育支出が低いのは政府の政策によるものなのかどうか、データを用いて検証する事が必要となります。



今回のデータはOECDのデータをチェックする意味ために、ユネスコ統計局(UIS)と世界銀行World Development Indicators(WDI)から持ってきて、2006年以降でData are most recent year availableなデータポイントを使用しています。まずは話題の中心であるGDP比の公教育支出の各国一覧からどうぞ。縦軸は%です。改めてみるとコメントする気が失せますが、日本のGDP比公教育支出はOECD諸国の中でも最下位でかなり低い値を示しています。
スライド1



ここからはこの酷い数字の責任が政府の政策によるものなのかどうか検証していきます。まず、政府の規模から見てみます
スライド2
取り立てて小さいわけではないですが、日本の政府規模は小さいほうに分類されます。この時点でGDP比の公教育支出の割合が低いのは100%政府の政策によるものだと言い切ることはできなくなっていると思います。GDP比の公教育支出が低い事が問題視されるのであれば、もう少し国民が大きな政府を嗜好して投票行動に移す必要があるかと思われます。

次に政府支出に占める教育支出の割合を見ます↓
スライド3
途上国だと、政府の徴税能力の問題などで政府がそもそもあまり大きくなりきれないのに、授業料無償化を実施し、政府支出に占める教育支出の割合が20%を超えたりもします。先進国だと12-15%ぐらいが標準的かな?という印象です。さて、日本はといえば…、普段途上国のこういうデータばかり見ていて日本の教育財政に関するデータをちゃんと見た事がなかったのですが、これは酷いですね。正直ここまで日本政府が教育に予算を割いていないとは思っていませんでした。日本は資源がないから人材が命だとか、科学技術立国だと政府は言っていたような気がするのですが…、僕の記憶違いかもしれません。

少子高齢化が叫ばれて久しい日本なので、学生数がそもそも少なく、生徒一人当たりに予算を目一杯使ってもGDP比で見ると大した事ないし、政府支出に占める教育支出の割合が低くなっている可能性は大いにあります。というわけで、一人当たりGDP比の生徒一人あたりの公教育予算額を見てみましょう(学生の人口比は、全人口に占める就学年齢人口×純就学率で出せるのですが、ちょっと計算がめんどくさいので省略します。。。)↓
スライド4
これもやっぱり酷いですね。世界でも類を見ない少子化で子どもの数なんて大していないんだから、もう少し子ども1人1人を大切にしてしっかり予算を割こうよ、と思うのですがどうも日本政府は全く違う考え方を持っているようです。

まとめると、日本の政府の規模は決して大きいとは言えませんが、政府予算の中から教育に使われるのは極僅かだし、しかもそれは学生の数が少ないからというよりも、そもそも学生一人一人に政府による支援がしっかり行われていない、というどうにも救い難い政策を政府が取っている事が分かりました。



次回はこの少ない政府支出がどのように使われ、政府支出を民間がどれだけ補っているのか、なぜ日本は公教育支出が少ないのに国際学力調査で良い点を収めているのか、なぜ国際学力調査では良い成績を叩き出しているのに高等教育になると世界に太刀打ちできなくなるのか?を教育財政的な側面から考えてみようと思います。

専門外なので妄想の範囲を出ませんが、今の老人世代が若い頃に将来へのつけで豊かな生活を送り(赤字国債)、手厚い年金と医療補助を受け、そのために教育予算が圧迫されているんだけれども、それを誤魔化す為に教育立国・科学技術立国だの言っているんだとしたら、恐ろしい国ですね。。。アメリカ市民権の取得を真剣に考えた方が良さそうだ…。

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コメント
この記事へのコメント
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo7/shiryo/08021216/004.pdf
こっちをみると、日本の教育投資は初等、中等教育では子供一人当たりOECD平均を上回ります。逆に私的投資が多いのが幼児教育と大学教育です。日本は幼稚園、大学に私立が多いから、公的投資の比率が低くなっているのだと思われます。現に小中高校レベルでは低くありません。教育は効率的に行なうべきなので、これで十分だと思いますよ。むしろ、小さな政府なのだから、初等、中等教育への公費投入は、もう少し少なくてもいいかも。
2011/09/17(土) 12:55:00 | URL | sawa #o14txy56[ 編集]
SAWAさんへ
なかなか良い点を指摘されていると思います。しかし、僕があえてなぜ教育投資の絶対額ではなくGDP比で見たかというと、各国のGDPがそもそも大きく異なるからです。分かりやすく言うと、一人当たりGDPが1万ドルの国と5万ドルの国では、それぞれ同じく政府が500ドルを教育に費やしていたとしてもその意味合いが異なります。一人当たりGDPが5万ドルの国にとってはたかが1%ですが、1万ドルの国にとっては5%になります。

そして、日本の一人当たりGDPはOECD平均よりも高いので、初等・中等教育投資の絶対額がOECD平均よりも高い、というのは全然意味がない数字となります。

また、教育を効率的に行うべきという命題と、教育投資は少なくても大丈夫、という命題は全然異なるものなので、教育は効率的に行われるべきだから教育投資はこれで十分、という議論も成り立ちません。。。
2011/09/17(土) 13:15:43 | URL | RED #-[ 編集]
各国の予算の割り振りの比較が、
結果の教育関係支出額の何かに対する比率を公開しても、それでいえることはそれに対する教育関係費が少ないとか多いとかだけです。
この分析の結果では、無駄な支出や不当支出の是正もなく国民負担の増で解決すべきだという、おかしな方向へ
展開していくし、このようなやり方が不当支出の恩恵をもつ既得権者に利用されてきた。
なぜ、少ないのか なぜ多いのか。また少ないことが致し方ないことなのかや、どこに問題点がありどうすれば教育関係費の割合を是正できるのか、、
そのが大切ではないのかと思う。
そのためには、予算支出の項目別比較だと思いますが、、
2011/09/17(土) 21:06:35 | URL | 慶 #sulmDUoQ[ 編集]
慶さんへ
コメントありがとうございます。なかなか面白い主張だと思いますし、教育関係費が多いか少ないかしか分からないというのも一理あると思います。

ただし、慶さんの主張には幾つか傷があります。まず不当支出と既得権者というジャーゴンを用いていますが、それぞれ教育政策の文脈でどのような事を指していますか?不当支出とは収益率分析でマイナスになるものですか?格差を広げるものですか?既得賢者とは誰ですか、教員ですか?富裕層ですか?この辺りを明確にしないと何も主張できていないのと同義です。

次に、仮になんらかの不当支出があったとして、不当支出がある事と過少投資になっているものを増やすのは別の命題で、不当支出があるうちは過少投資を是正してはいけない、というのはいわゆるdouble barrel questionです。

最後に、「どこに問題点がありどうすれば教育関係費の割合を是正できるか考えなければならない」という点は仰る通りなのですが、それに対して予算支出の項目別比較は間違っています。ご自身で「支出額の比率を見ても、支出額の大小しか分からない」と仰っている通り、支出の項目別比較をしてもその項目に対する支出額の大小しか分からないと思いませんか?

仰られている事には尤もな事も含まれていて非常に興味深いのですが、上記3点が主張を台無しにしてしまっているので、もしご興味がありましたら、上記三点を考慮しつつまたコメントください。
2011/09/19(月) 08:40:17 | URL | RED #-[ 編集]
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