ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 「大学で何を学ぶべきか?」U.S. News & World Reportsから
2012年10月05日 (金) | 編集 |
以前SYNDOS JOURNALさんの方で、「高等教育の量的拡大はどのように行われるべきか?」という記事を掲載して頂きました。この記事の中で、大学教育と賃金の関係についてどのような感じの研究がこれまで行われてきているのかをざっと紹介しました。読んで頂けると嬉しいのですが記事を読むのが面倒な人のために要点を書いておくと、大学で学ぶタイミング・学ぶ大学の質・大学で学ぶ内容が、その後の賃金に影響を与える事が分かってきています。3点目の大学で学ぶ内容ですが、質的な物を扱う分野(一部の社会科学系・人文科学・サービス系)を勉強するよりも、量的なものを扱う分野(工学・理学・経済学)を勉強した方が、収入が高く・失業のリスクも低くなるようです。

といった内容だったのですが、やや抑えめのトーンで書きました。なぜかと言うと、学力テスト問題でかつて訴訟が起こり現在も大きな反発が出ているのですが、日本の教育関係者の大半はこの手の話が嫌いなので、あまりダイレクトに書くと、伝えたい内容なのに反発だけ買って聞いてもらえない事があまりにも多いからです。



ところが、U.S.News & World Reportで「College Majors With the Best Rerutn on Investment」という記事が掲載されていました。この記事の趣旨は「高等教育の量的拡大はどのように行われるべきか?」の大学で学ぶ内容が賃金に与える影響と殆ど同じですが、表現がより直接的で分かりやすいので、内容をかいつまんで紹介しようと思います。

期待賃金が高い専攻

Engineering, physics, computer science, and mathematics boast strong earning potential and low unemployment rates, which can help you reap the highest return on your education investment

工学・物理・コンピューターサイエンス・数学を専攻すると、高い賃金を得つつ失業リスクも低くてすむ可能性が高く、最も高い教育投資効果を得られるであろう、という事だそうです。

With average starting salaries hovering close to $98,000 per year, a median salary of $120,000, and 95 percent of graduates employed full time, petroleum engineering majors can expect a solid return on their degree. The same goes for students majoring in geological engineering, a niche degree that yields high salaries and nearly 100 percent employment for majors.

工学の中でも、石油工学や土木工学の卒業者が高い給与や安定した雇用を得ているように、現在労働市場で求められている分野というものがあり、それを専攻すると高い給与と安定した雇用が期待できる、という事だそうです。

教育の長期な効果

[In] nursing, you get paid really well in the beginning, but then you just don't grow much in your career. Graduates with degrees in physics, economics, or statistics often enter the workforce with lower initial salaries, but the potential for income growth.

看護学を専攻すると初任給は高いものの給与の伸びはイマイチ。しかし、物理・経済・統計を専攻すると初任給はイマイチでも給与の伸びは高い給与の伸びが期待できる。このように、専攻によって生涯収入に差があるだけではなく、その内訳である初任給と給与の伸びにも違いがあるようです。

The flexible skillset makes these degrees solid investments. (中略) "A lot of people talk about majoring in business ... actually, economics is even better, because you learn a lot more quantitative analysis, a lot more statistics, and things that are applicable in kind of this big data world. Similar to physics, it's really good for salary growth overall."

物理・経済・統計を専攻する事が堅実な教育投資となるのは、これらの専攻では柔軟なスキルを育ててくれるからです。MBAのような学位が注目を集めていますが、経済学の方が良いようです。これは、莫大な顧客データや市場データを分析するための、量的な分析手法や統計学を学べるから、という事のようです。

STEMと他の科目

"Whether it be sociology, or political science, or anthropology ... anything that helps you understand people's behaviors and trends in behaviors,"

社会学であろうが、ポリサイであろうが、文化人類学であろうが、人々の行動やその傾向を理解させてくれる専攻は役に立つように、STEM(Science, Technology, Engineering, and Mathematics:科学・技術・工学・数学)以外を習得しても、魅力的な教育投資となる可能性はあるようです。

"If you're in one of the STEM majors ... you can justify going to a more expensive school because they pay better and there's more job opportunities. If you have more interest in art or humanities ... then you should probably think about going to a cheaper school."

STEMのどれかを専攻するのであれば、高い賃金や良い雇用が期待できるので、学費の高い大学へ行くのも妥当性がある。しかし、人文科学系を専攻するのであれば、学費が安い大学へ行く事を検討した方がよい、というのがこの記事の結論です。



この記事は、かなり僕が書きたかった事を簡潔かつ直接的に、教育の供給側ではなく教育の需要側の視点で書いてくれています。これを、日本のケースに沿って教育の供給側の視点からまとめると、要点は次の3点になると思います。

①今、そして今後どのような技術や知識が労働市場で求められているのかよく見極めて、教育投資を行う分野・専攻の選択と集中を図るべき(石油工学や土木工学)。

②日本では大学よりも専門学校に行って手に職をつけるべきという話や、職業教育のような話に人気があって、そのような分野への教育需要も低くはない。しかし、このような分野は目先の雇用や賃金は保証してくれるかもしれないが、中長期的に雇用や賃金を保証するわけではない(看護学)。これらの教育にかかるコストの高さや技術革新の速度を考えると、技術革新にも対応でき、かつ新しい知識をどんどん吸収していけるような、柔軟なスキルと訓練可能性・高い学習可能性を養ってくれるような教育分野(物理学・経済学・統計学)を重視すべき。

③そのような教育分野がSTEMであり、その重要性の高まりにもかかわらず、ここ20年の日本の高等教育の拡大は逆方向に進んでしまった。特にこの20年間で増えた大学生の90%以上は女性であり、これが日本の女性の低い労働参加率や低い賃金の一因となっている可能性が高い。日本は「女の子こそ手に職を」や「女の子らしい学問:文学部、家政科とか」という長期的視点を全く欠いた思い込みが強いようだが、女の子こそSTEMを、である。



私は基本的にアメリカの生活が嫌いなのですが、アメリカは日本と違ってこういった議論が堂々とできるので、またいつか自分の職業スキルを高めるためにアメリカに戻るんだろうな、と思います。教育って本来それ自体が目的なのではなく、教育を受けた子どもや社会が豊かになるための手段だと思うのですが、大人が教育を施す事を通じて自己満足するための議論が多くて、こういった議論が行われない今の日本の教育界隈って極めて不健全だと思うんですよね、個人的には。。。
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コメント
この記事へのコメント
勉強になりました
 今回も勉強になるお話でした。どうもありがとうございます。現場の教員として教育を供給する側だけにちょいと耳に痛い部分もありましたが。
 日本の現状ですが、ここ数年の大学受験生の傾向は、
・私立より国公立
・文系より理系
・学術より実学
・できるだけ資格
という傾向がますます顕著です。具体的には国公立大学の医・理・工・薬・歯・農・家政(栄養士)・教育といった学部が大人気です。投資額が比較的低くて済む国公立で理系学部に行きたいというのは、合理的な志向だとは言えそうです。(本人の適性に合うかどうかは別ですが)
 で、記事中のSTEMに触れられていない部分で、日本でやたらと意識されているのが
・医学
・言語(ズバリ英語)
じゃないかと思います。この2つは生徒も保護者も将来の収入につながるという強い信仰を持っています。
 医学はともかく、言語に関しては、アメリカのように英語が母語の土地柄だとたぶん有用なデータは出てこないんじゃないでしょうか。
 私自身(英語教師です)の感覚からすると、文学部の英米文学科や外国語学部で外国語を学ぶよりも、経済学部や法学部やその他の学部であれこれを学んで、言語については留学なりダブルスクールなり学内のプログラムを取るなりのプラスアルファで身につけた方が「英語を使うお仕事」には就きやすいように思えます。

 女子がSTEMに行きたがらない理由については私もまだ思考中ですけど、大学進学を目指す高校生女子の場合、物理がガンになるケースが多いみたいです。物理ってのはちょっとつまづくとひどい点数を取りやすい科目です。中学からコツコツ努力してどの科目もまあまあソツなくこなしてきた優等生女子にとって、いきなり30点とか10点とかいう成績が出ると、あまりのショックに放棄してしまうということはあるのかもしれません。
2012/10/06(土) 21:36:30 | URL | shira #-[ 編集]
Re: 勉強になりました
言語の習得の便益については、計測上の難しさも相まって確かにあまり進んでいない印象を受けます。アメリカで働いてみた個人的な経験で申し訳ないのですが、私もshiraさんのご意見に賛成で、英語自体を仕事にしようとする(外国語学部・国際学部)より、仕事で英語を使う(経済学部・工学部)方が仕事は圧倒的に多いような印象を受けます。

女子がSTEMに行かない理由は物理の可能性があるというのは、教授法の観点から見る事に欠けている私にとってはとても興味深いご意見でした。この女子がSTEMに行かないのは世界的な傾向なので、他国の事例とか見ながら、時間が出来たら勉強してみようと思います。
2012/10/09(火) 15:32:39 | URL | 畠山勝太 #-[ 編集]
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