ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 大阪維新の会の教員政策は成功するか?をアメリカの経験から考える。中編
2012年01月17日 (火) | 編集 |
前回は橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会の教員政策を考えるに当たって、アメリカで給与表(号棒制・年功序列賃金)→メリットペイ・キャリアラダーシステム→学校評価・KSBPと教員給与制度が変遷していった過程と、それぞれの教員給与制度の特徴を軽くさらいました。

では、今回は本論に入って大阪維新の会の教員政策の特徴と問題点を、アメリカの教員政策の変遷に照らし合わせて考えてみようと思います。



大阪維新の会が提出した教育基本条例の中で、教員政策に関わるものとしては次のものが挙げられます↓

第11条 府立高等学校及び府立特別支援学校に、保護者及び教育関係者(当該学校の教員及び職員を除く。)の中から校長が委嘱した委員で構成される学校協議会を設置しなければならない。
2 学校協議会は、校長の求める事項について協議し、学校運営に関し意見交換や提言を行うほか、次に掲げる権限を有する。
(1) 第5条2項及び第46条に定める部活動等の運営に対する助言
(2) 第8条第3項に定める校長の評価
(3) 第8条第4項に定める教科書の推薦に関する協議
(4) 第15条第3項に定める学校評価
(5) 第19条第2項に定める教員評価

第14条
府教育委員会は、校長及び副校長を任用するときは、一般職の任期付職員の採用等に関する条例(平成十四年大阪府条例第八十六号)に定める選考により任期を定めて行う。ただし、再任を妨げない。
2 府教育委員会は、前項の任用に当たり、年齢、職歴、教員としての在職期間等を問わず、マネジメント能力(組織を通じて運営方針を有効に実施させる能力)の高さを基準として、教員を含む意欲ある多様な人材を積極的に登用しなければならない。
3 府教育委員会は、校長の任用に当たっては、府教育委員会が指名した外部有識者による面接を実施し、その結果を尊重しなければならない。
4 府教育委員会は、副校長の任用に当たっては、前項の外部有識者による面接の結果に加えて、校長の意見も尊重しなければならない。
5 第三項に定める外部有識者の指名に際しては、産業界、法曹界、労働界、教育界など広く人材を求めなければならない。

第19条 校長は、授業・生活指導・学校運営等への貢献を基準に、教員及び職員の人事評価を行う。人事評価はSを最上位とする5段階評価で行い、概ね次に掲げる分布となるよう評価を行わなければならない。
(1) S 5パーセント
(2) A  20 パーセント
(3) B  60 パーセント
(4) C  10 パーセント
(5) D  5パーセント
2 教員の評価に当たっては、学校協議会による教員評価の結果も参照しなければならない。
3 府教育委員会は、第1項に定める校長による人事評価の結果を尊重しつつ、学校間の格差にも配慮して、教員及び職員の人事評価を行う。 人事評価はSを最上位とする5段階評価で行い、概ね第1項に掲げる分布となるよう評価を行わなければならない。
4 府教育委員会は、前項の人事評価の結果を直近の給与及び任免に適切に反映しなければならない。
5 府教育委員会は、第3項の人事評価を教員及び職員の直近の期末手当及び勤勉手当に適切に反映して、明確な差異が生じるように措置を講じなければならない。


この中からキーポイントを簡潔にまとめると次の点となります↓
・校長はマネジメント能力を基準に府教育委員会が選抜するが、外部有識者が面接を行い、任期付き採用となる
・校長が選んだ委員による学校協議会も教員評価を行う
・校長は自らが選定した学校協議会の意見を尊重しつつ教職員の評価を行う
・教職員の評価は相対評価に基づく5段階評価で行われる
・教職員評価の結果はボーナスにのみ反映されるが、最低評価を2年連続で取ると退職



この5点についてそれぞれアメリカの経験から考察を加え、大阪維新の会の教員補償政策は教育の質を上げることができそうか否か分析していきます。

まず、1点目を考えてみます。校長には教育者としての校長とマネージャーとしての校長の2種類あり、どちらも兼ね備えているのが理想ですが、どちらに重きを置くかによって校長の育成や研修が異なってきます。日本はこれまで圧倒的に前者でしたが、大阪維新の会の教員政策では後者が強く打ち出された印象があります。アメリカは教育委員会が徴税権を持つほど強力でマネージメント機能を握る一方、校長の多くも学校運営や教育行財政などの修士号や博士号を取得しています。アメリカの校長は日本の教育者としての校長とイギリスのマネージャーとしての校長の中間ぐらいに位置しており、私の不勉強ではあるのですが、アメリカの経験と照らし合わせても教育者としての校長とマネージャーとしての校長のどちらが良いか?は、正直分かりません。。。



次に、2点目の検討です。ここには問題点が2つあります。前回ご紹介したアメリカの教員政策の歴史の中で、教員評価導入の第二波から第三波への移行では、いかに恣意性を排除し教員が納得できる客観的な評価を行うかが1つのポイントとなりました。メリットペイ側はテストの点数など指標化できる基準を採択し、キャリアラダー側は研修の修了や出版物といった教員自身・校長・保護者・生徒といった当事者ではなく第三者による評価基準を採択しました。学校協議会は明らかに利害関係者であり、ここの評価を教員評価に取り入れるのは、アメリカが1950年代に犯した失敗と同じ結果になる可能性が極めて高いと私は考えます。

さらに、学校協議会のメンバーが校長によって選択されるという点も、恣意性以上の問題を抱えています。近年地方分権化や住民主権といったジャーゴンがブームで、学校協議会もこの流れの1つだと考えられるのですが、この手の政策を成功させるには2つのキーポイントがあります→①どの権限を、どのレベルに、どの程度委譲するかの適切な判断、②権限を与えられる側のキャパシティビルディング。私は教員給与に反映される教員評価は上の理由により移譲されるべきものではないと考えますし、大阪でもとりわけ低SESの地域では親のキャパシティ的に適切な判断が下せるとは思えません。もし仮に教員評価を学校協議会にやらせるとしても、校長に対して効果的に反論ができるよう学校協議会メンバーのキャパシティビルディングが必要不可欠であると考えます。

3点目は、2点目で示した事と全く同じ理由により問題があると考えます。



4点目もアメリカが100年の歴史の中で経験した事と同じ問題を抱えています。まず、教育セクターと民間セクターは決定的な大きな違いがあります。民間セクターは結果を出せば従業員の給与のパイが大きくなりますが、教育セクターは教員たちが結果を残しても、給与のためのパイが大きくなるわけではありません。そのため、民間セクターでは従業員を相対評価して、売り上げが伸びた分のパイを貢献度に応じて従業員の給与として相対的に割り振ることが可能なのですが、教育セクターではそれができません。

それゆえ、5段階評価に関しても機能しうる条件の綿密な調査が必要です。上記でも触れましたが、教育予算は民間セクターと異なり固定的であるため、ボーナス額×ボーナス人数が一定に保たれる必要があります。このため、ボーナスを受け取れる人数を多くしようとすると一人当たりのボーナス額が小さくなりますし、ボーナス額を大きくしようとするとボーナスを受け取れる人数が少なくなります。たかだか数万円の一時金のためには努力をしないというのも十分あり得るし、受け取れる確率が極めて低いもののためにわざわざ努力をしないというのも十分ありえます。このため、さらなる資質向上のための努力を引き出そうと考えた場合、ボーナスの額・受け取れる確率に対して大阪の教員という属性を持った集団がどのような反応を示すのか調査した上で、適切なボーナスの額・ボーナス受給確率を設定する必要があります。

また、教員給与と教員の動機付けに関して、賃金のようなExtrinsic Motivation(外発的動機付け)がIntrinsic Motivation(内発的動機付け)を阻害するケースも多数確認されているため、どの程度のどのようなボーナス設定がIntrinsic Motivationを阻害せず、教員の資質向上のための努力を最大限引き出せるのか?という調査も併せて行われる必要があります。

さらに、メリットペイ・キャリアラダー双方が第三波で経験したように、相対評価に基づく教員評価は失敗に終わる可能性が極めて高いです。教員は教職課程を終えれば一人前の教師、というわけではないので熟練教員による非熟練教員の教育が必要不可欠です。さらに、刻々と変化する教育を取り巻く環境に対処するために、教員は専門職として協働して資質の向上を図ることが求められます。しかし、相対評価はこの連携を破壊してしまうため、アメリカでは第三波のメリットペイ・キャリアラダー双方が教育の質そのものを上げる事に失敗しました。



第5点目の検討に移ります。教員評価をボーナスに反映させるのはアメリカの経験的にも正解だと考えられます。教員評価導入の第三波で登場したキャリアラダーシステムが失敗に終わった1つの理由に、教員評価によって基本給を動かしてしまったために、コストが高騰し財政破綻を招いたという点が挙げられます。これを避けるためにも、現在では教員評価の結果は手当て又は一時金の形で処遇すべきと考えられているので、この点大阪維新の会の教員政策は上手くいくと考えられます。

さらに、人事評価が2年連続で最低評価であった教員を退職させる事それ自体も上手く機能すると考えられます。質の低い教員を取り除く事の重要性は第三波の頃から明らかになっています。特に、日本はアメリカと異なり1年目の初任者研修修了と共にいきなりテニュア(終身雇用)を出してしまい、質の低い教員を排除するシステムが存在していないため、質の低い教員を退職させる効果はアメリカ以上にあると考えられます。

しかし、評価の単位が個人なのはいただけません。第二波及び第三波のメリットペイが経験し、かつ第4点で指摘した様に、教員は専門職としての協働が必須なのですが、個人を評価単位としてしまうとこの協働が損なわれてしまいます。確かに評価単位を個人ではなく集団に設定する必要性はあるのですが、学校群・学校・学年・同科目集団のどこで区切るのが良いのかはその国・地域毎に異なってくるので、大阪では評価単位をどこに設定するのが適切なのか調査を行う必要があると考えられます。



今回は大阪維新の会の教員政策のそれぞれの点を吟味しましたが、次回は大阪維新の会の教員政策の問題点をまとめ、どのような改善策がありうるか検討し、大阪維新の会の教員政策とアメリカの経験について個人的な所感を述べようと思います。
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