ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 大阪維新の会の教員政策は成功するか?をアメリカの経験から考える。前編
2012年01月15日 (日) | 編集 |
日本にいないので、イマイチ実感は湧かないのですが、ネットを見ていると橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会の教員政策、とりわけ教員補償政策(Teacher Compensation Policy)が何かと話題になっているので、この大阪維新の会の政策とアメリカ合衆国自身のこの政策に関する経験を照らし合わせて少し考えてみようと思います。

まず、どうして大阪維新の会の教員補償政策をアメリカの経験と照らし合わせて考えるのか?なのですが、大阪維新の会の教育補償政策の大きな特徴として、「教員評価に基づいた教員に対する処遇」が組み込まれているからです。アメリカの教員補償政策も、教員評価に基づく教員給与と年功序列に基づく教員給与の間を振り子のように何度も行ったり来たりして、その振り子の中で評価制度は試行錯誤を繰り返し、手法として洗練されていきました。なので、この試行錯誤の過程と大阪維新の会の政策を比べる事で、大阪維新の会の教員政策が大阪の教員の質を上げる事ができるのかどうかを考える事ができるかと思います。



大阪維新の会の教員政策を考える前に、アメリカの教員補償政策変遷の歴史とその中で生み出された教員の評価軸と評価システムを軽くご紹介しておきます。

年功序列ではなく評価に基づく教員給与制度は、教育の質が問題視される度に導入の試みが行われています。これは、教育の質を上げるためには教員の質を上げる事が必要で、評価に基づく教員給与制度は教員の質を上げる、という仮定に基づいています。

評価に基づく教員給与制度導入の試みの第一の波は1920年代に早くも来ているのですが、これは大恐慌による混乱の中で消えました。第二波は1950年代末にスプートニクショックがもたらし、第三波は1980年代中盤の「危機に立つ国家」の出版によって引き起こされました。そして現在PISAやTIMSSのような国際学力調査の結果によるショックが第四波をもたらしている真っ只中です。

教員評価導入の第一波に関しては、あまり資料が残っていないので詳しい事は分かりません。教員評価導入の第二波は、その当時の技術的に評価が上手くできず、教員達から評価が恣意的であると猛反発をくらい頓挫したと言われています。

第三波はキャリアラダーシステムと洗練されたメリットペイシステムをもたらしました。前者はテストのような教育の成果をもって教員を評価するのではなく、成果につながると考えられる職能成長を評価して給与に反映させるシステムで、具体的には研修修了・出版物・試験合格などによって給与が上昇していくというものでした。後者はあくまでも教育の成果を評価して教員給与に反映させる事に固執したもので、第二波の流れを汲んだものです。しかし、前者は財政破綻を、後者は思ったように教員の資質を向上させられず、どちらの試みも失敗に終わりました。

現在の波では、依然としてメリットペイシステムを導入して失敗しているケースが見られますが、キャリアラダーシステムの流れを汲むKnowledge and Skills Based Pay(KSBP)と、メリットペイシステムの限界を乗り越えた学校評価(バウチャー制度も実はこれに近い)を教員個々人に反映させる方法が出てきました。




次に、変遷の中で出てきた教員給与制度を軽く説明します。アメリカは100年に及ぶ教員評価を教員補償政策に組み込もうとする試みの中で、次の4つの教員評価軸と3つの教員給与制度が生まれました→評価軸:①経験・学歴or免許、②職務、③職能、④成果。評価制度:A.給与表(年功序列賃金)、B.メリットペイ(成果給)、C.キャリアラダー。

A.の給与表は現在日本の公務員制度で広く使われているもので、教員評価軸①の学歴or免許と経験年数の違いや②の職務(校長・教頭・主幹・ヒラ)の違いによって何級何号棒か決定され、給与はその号棒(号棒制度)によって決まるものです。つまり、教員志望者の学歴が望ましい水準よりも低い人材しか集まらないor/and離職率が高い状況があり、かつ学歴や経験年数が教育の成果と強く結びついている状況を解決するのに向いた制度です。意外に思われるかもしれませんが、アメリカでは教員の離職率が特に理系教員の間で高く、かつ依然として教員免許を持っていない人材が教壇に立っているケースがしばしばあります。これが、アメリカが本格的に教員評価に基づいた給与制度に踏み切れない理由の1つになっています。

B.メリットペイとC.キャリアラダーは、教員の学歴や経験年数はあまり教育の成果に結びつかない事、号棒制度では頑張っている教員も怠けている教員も同じように処遇されるため、頑張っている教員の間で不満が高まり離職率が高くなってしまう事が明らかとなり、これらに対処するためにあみ出されました。B.メリットペイは、教員評価軸④の成果を直接給与に反映させる事で教員に対して資質の向上を促すものです。まずは、①校長や教育委員会の評価を成果としていましたが、恣意性が拭えない事、教育の成果の定義が曖昧な事から失敗しました。次に、②教育の成果として分かりやすいテストの成績が使われるようになりました。しかし、例えば年度初めの平均点が89点のクラスを90点にするのと50点のクラスを60点にするののどちらが評価されるべきか?、といった技術的な問題点から失敗しました。さらに、③計量経済学の進展などによってValue Added(教員がどれだけ生徒に付加価値(成績の理論値に対してどれだけ伸ばせたか?)をつけられたか)という方法が編み出されましたが、これも上手く機能しきれていません。教員個々人を評価対象としたため、教育の質を向上させるために必要不可欠な教員間の連携や教え合いがなくなり、全体の成績は向上していないケースが続出したためです。結果、④学校や同科目集団など評価対象を個人ではなく団体にする事で、その教員団体内で教え合いや連携を維持させつつ、競争メカニズムを活用して教員に資質向上を促す事ができるようになってきました。

C.キャリアラダーは、B.メリットペイの教員間の連携の喪失や評価の難しさといった失敗を補うために、教育の成果を直接教員給与に反映させるのではなく、教員評価軸③の経験や学歴よりも教育の成果に対する結びつきが強く、かつ経験や学歴と異なり一過性のものではない職能を給与に反映させるシステムです(職能によって職務を分けるものがその起源で、このため名前がキャリアラダーとなっています)。当初は研修や出版物といったものを給与に反映させていましたが、最新版ではKnowledgeとSkillsのブロックを作りそれをクリアしていく事で昇給する制度も作られています。



では、大阪維新の会の教育政策は、アメリカの100年の教員補償政策の歴史のどの辺りにいて、4つの評価軸と3つの制度の中のどこに位置するのでしょうか?長くなったので、続きは次回にします。
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