ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 日本の女子大と女子大生―日本の女子教育の現状と課題、の続き(後編)
2012年11月08日 (木) | 編集 |
前回まで、日本の大学生がどの程度どのような大学に在籍しているか、女子大生はどのような大学に在籍しているか、を見てきました。今回は女子大に焦点を当ててみようと思います。日本には女子大が約80校存在しており、日本の大学の10%ちょっとは女子大という事になります。その内訳をみると、国立2校、公立2校、後は私立大学と圧倒的に私立大学に女子大が多い事が分かります。

偏差値

上の表が示すように、国立の女子大はお茶の水女子大と奈良女子大の2校で、2校合わせた学生数は4190名であり、これは国立大学に在籍する女子大学生の約2.62%にしか相当しません。同様に、公立の女子大は群馬県立女子大と福岡女子大の2校で、2校合わせた学生数は1804名であり、これは公立大学に在籍する女子大学生の約2.65%にしか相当しません。つまり、国立大学に通う大半の女子大学生は女子大ではなく共学の大学に在籍している事が分かります。また、これら4つの大学が開校している学部を見ると、日本の女子大学生の在籍パターンを反映するかのように、大半が人文科学系ないしはサービス系となっています。

次に私立の女子大ですが、北は藤女子大学に在籍する2234名から南は鹿児島純心女子大学の642名まで、合計73校に合わせて約18.4万人の女子大生がおり、私立女子大は国公立女子大と違ってある程度の存在感を持っています。約18.4万人という私立女子大に在籍する女子大生の数ですが、これは私立大学に在籍する女子大学生の約21.1%に相当し、私立大学に通う女子大学生の5人に1人は女子大生という事になります。

次に私立女子大の規模ですが、超小規模校(<1200)が17校、小規模校が29校(<2400)、中規模校(<6000)が22校、大規模校が5校となっています。小・中規模の私立女子大が多いように思われるかもしれませんが、一般的な私大の分布とそれほど差があるわけではありません。地域分布については北海道・東北地方に5校、東京に20校、関東に12校、中部に5校、近畿に17校、中国・四国に5校、九州に9校となっており、これも一般的な私大の分布と大きく異なっているわけではなさそうです。

偏差値

このような私立女子大ですが他の大学と大きくとなる点が一つあります。それは、学部の分布です。上の表のデータは各私立女子大のHPから持ってきたものを分類したので、実際に各私立女子大が学校基本調査で報告している物と多少のずれはあるかもしれません。私立女子大の特徴として、開設されている専攻が、文学・家政・教育(主に児童教育)・国際XX学部・医学(主に看護)・福祉に偏っている事が挙げられます。特に、私立女子大生の約80%は文学・家政・児童教育のいずれかを専攻している事になります。

逆に、社会科学・工学・理学を専攻している女子大生は殆どいません。事実、経済学部・工学部を開設している私立女子大はありません。法学部を開設している私立女子大も京都女子大学しかありません。その他の理系分野についても、日本女子大学の理学部、東京女子大学の数理科学、津田塾大学の数学科・情報科学科ぐらいしかなく、西日本には存在しません。

このような私立女子大における開設学部の偏りは、「高等教育の量的拡大はどのように行われるべきか?」の中でも提示した枠組みに基づくと、圧倒的に雇用や賃金に結びつきづらい専攻に集中しており、その入学難易度と授業料を合わせて考えると、私立女子大の存在意義そのものが危ぶまれます。



さて、ここからがデータに基づかないあんまりにも突拍子な内容なのでシノドスさんに寄稿した「日本の女子教育の現状と課題」からは落とした内容です。日本の女子教育の課題は、①大学への進学率が低い、②STEM系を専攻する女子大学生が少ない、③国立大学でジェンダー格差が大きい、の3点です。記事の中では、学校・家庭・教育行政それぞれに問題があり、女子教育改善のためにそれぞれが努力する必要があると書きました。では、教育行政(教育計画)に焦点を当てた場合、女子教育改善のために何が出来るでしょうか?

まず考えられるのが、アファーマティブアクション的に、国立難関大学にのSTEM系学部に女子枠を設ける事です。しかし、かつて九州大学の数学科が入試で女性枠を設けようとした所、男性差別だとの非難が殺到し、これを撤回した事を考えると、この政策を日本で採用する事は極めて難しいと思われます。ちなみにですが、国連では女性を優先して採用すると明言しており(TORにすら書いてあります。)、極めて日本人男性が国際公務員になりづらい状況になっているので、九州大学数学科に抗議した人にはぜひぜひ国連の方にも抗議してほしいものですが…(苦笑)。

そこで考えられるのが、国立の女子工業大学の設立です。まず、お茶の水女子大学・奈良女子大学の廃止論が出ないように、国立の女子工業大学を設立する方が、国立大のSTEM系学部に女性枠を設けるよりも、風当たりは強くないと考えられます。さらに、国立・公立の女子大学生に占める女子大生の比率は3%未満なのに対し、私立では21%以上もあり、工業大学は脇に置いておいても国公立女子大そのものへの需要はあると考えられます。

国立の女子工業大学の設立で、現在の女子大が抱える開設学部の偏りに介入するという教育の供給側の問題だけでなく、そのような女子大を選択している教育の需要側の問題にも切り込もうと思うとかなり大胆にやる必要があると思います。まず、授業料を極めて低く抑えるかふんだんに奨学金を用意して、女子高生の大学進学・STEM系進学需要を掘り起こす必要があります。さらに現在の女子大への教育需要を考えると、できれば複数校設立して、国が真剣に女性のSTEM系への進学を支援する姿勢をアナウンスする事で、女子高生の教育需要に変化を起こしたい所です。



国立女子工業大学の設立という突拍子もない結論でしたが、この結論はさておき、日本の女子教育を考える事は日本の教育政策を考える上で一つ重要な事を提示してくれます。記事で触れた理由以外にも、教育でのジェンダー格差が問題視されるべき理由があります。

それは、高等教育でのジェンダー格差があるという事は、男性・女性に対して使われる公教育費に格差が生じている事を意味するからです。大学に行っていない人よりは行っている人に、私大生よりは国公立大生に、文系よりは理系に、税金が使われています。大学進学率・国立大学・理系において顕著なジェンダー格差があるという事は、教育段階においては顕著に女性よりも男性に対して税金が使われている事を意味します。

そもそも、日本は国公立大学が名門大学となっていることから、名門大学に行ける富裕層の子弟に教育段階で税金が使われがちなシステムとなっています。さらに、ここ数日文科大臣の発言で「大学生の数が多過ぎる」という議論が再び注目を集めていますが、大学生の数を絞れば基本的には大学に残るのは富裕層の子弟であり、税金が富裕層の子弟により一層集中する事が大いに見過ごされていると思います。

私は、教育とは個々人がより豊かな生活を送れるようになる手段であり、国にとっては経済成長の手段であると同時に経済格差を縮小させる手段でもあると信じています。しかし、日本の女子教育の現状が示すように、日本では教育が経済成長を達成したり経済格差を縮小させたりする手段である、とは認識されていないようです。とても残念ですね。



今回参照した女子大は次の通りです。もしどこか抜けている所があったら、コメント欄でご連絡頂けると嬉しいです。日本の女子大一覧(2012.11現在)→【北海道・東北】藤女子大学・東北女子大学・宮城学院女子大学・仙台白百合女子大学・郡山女子大学。【関東】女子栄養大学、跡見学園女子大学、愛国学園大学、十文字学園女子大学、川村学園女子大学、聖徳大学、和洋女子大学、フェリス女学院大学、東洋英和女学院大学、鎌倉女子大学、女子美術大学、相模女子大学。【東京】日本女子大学、大妻女子大学、共立女子学園大学、東京家政大学、昭和女子大学、聖心女子大学、清泉女子大学、学習院女子大学、東京女子大学、東京女子医科大学、日本女子体育大学、東京家政学院大学、白百合女子大学、東京女子体育大学、津田塾大学、駒沢女子大学、東京女学館大学、恵泉女学園大学、東京純心女子大学、実践女子大学。【中部】岐阜女子大学、金城学園大学、椙山女学園大学、名古屋女子大学、桜花学園大学。【近畿】京都ノートルダム女子大学、同志社女子大学、京都女子大学、京都光華女子大学、平安女学院大学、梅花女子大学、大阪樟蔭女子大学、神戸女子大学、甲南女子大学、神戸松蔭女子学院大学、神戸親和女子大学、神戸海星女子学院大学、神戸女学院大学、武庫川女子大学、大阪女学院大学、千里金蘭大学、園田学園女子大学。【中国・四国】ノートルダム清心女子大学、広島女学院大学、安田女子大学、広島文教女子大学、松山東雲女子大。【九州・沖縄】九州女子大学、西南女学院大学、福岡女学院大学、福岡女学院看護大学、筑紫女学園大学、活水女子大学、尚絅大学、長崎純心女子大学、鹿児島純心女子大学。【国公立】お茶の水女子大学、奈良女子大学、群馬県立女子大学、福岡女子大学。
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