ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 大阪維新の会の教員政策は成功するか?をアメリカの経験から考える。後編
2012年01月18日 (水) | 編集 |
前回までで、アメリカの100年に亘る教員評価を教員補償政策に反映させようとする試行錯誤の過程を説明し、それに照らし合わせて橋下徹市長率いる大阪維新の会の教員政策を考えてきました。

今回は、大阪維新の会の教員政策の問題点をまとめ、どのような改善策がありうるのか考えてみようと思います。



前回までで説明しましたが、大阪維新の会の教員政策の問題点として以下の6点が挙げられます→
①教員評価で何を評価するかの妥当性・客観性が保てていない。
②利害関係者が教員評価に関与してしまっている。
③教員評価に関与する学校協議会の客観性及びキャパシティビルディングに問題がある。
④相対評価を導入してしまっている。
⑤評価単位が教員個人になってしまっている。
⑥大阪の教員のExtrinsic Motivationに対する反応の調査が行われていない。



改善策としては次のようなことが考えられます↓
①学校評議会と校長による教員評価を廃止し、毎年実施し結果を公表すると明言している学力調査テストをValue Added Methodが活用できるよう設計しなおした上で、テスト結果を活用した教員の絶対評価を中学校・高校の教員に対して行う。(この設計なら研究者にも非常に有用な研究データを提供できるのも利点)
②前述のメリットペイを導入する上で、評価単位を学校群・各学校・同科目教員集団・同学年教員集団のどの集団に設定するのが適切か調査を行い、評価単位集団を設定する。
③全科目を教える小学校の教員に、中学校・高校の教員に対して行うような単純なメリットペイを導入すると様々な弊害が起きる事が確認されているので、学力テストの結果も評価の一部に取り入れつつ、研修・出版物・多様な評価者による多面的な評価、及び授業研究の仕組みを活用した評価に基づくキャリアラダーシステムを導入する。
④賃金設定に対して大阪の教員がどのような反応を示すか調査を行い、ボーナスの額・受け取れる人数を設定する。

また、上記の改善策を組み込む上で、現在大阪維新の会が提言している①校長を任期付きで採用する、②教員評価はボーナスに反映させる、③最低評価を2年連続で取得した教員は退職させる、というのは維持して良いと考えます。教員を退職させる事に関してどうか?という意見もあるようですが、これは確かに調査が必要です。客観的な評価で2年連続最低評価を取った教員に研修を施し平均レベルまで引き上げるコストとfeasibilityに対して、経験がない分より安価に雇える新たな教員を雇いなおすコストとどちらが良いか?という問題ですが、恐らく後者の方がcost-effectiveだと考えられます。



最後に、大阪維新の会の教員政策とアメリカの経験について個人的な所感を述べようと思います。教育関係者には大阪維新の会はすこぶる評判が悪い印象を受けますが、教育政策は誰が言ったから正しいとか間違っているという類のものではなく、教育を受ける子どもやその子どもたちが生きていく社会にとって効果があるかどうかで一つ一つが吟味されるべきものです。大阪維新の会の教育政策を一つ一つ吟味せず、総体として叩くのには違和感を覚えます。

次に、教員評価を教員保障政策に取り入れていくことに関しても、これまで日本は比較的高い給与を教員に支給し、ある程度質の高い人材を集めてきましたが、日本の財政や2次産業の海外流出によってより高度な知識を兼ね備えた人材を育成していく必要がある事を考えると、現状維持ではなく今後はより良質な人材を教職に焚きつけ、選抜し、その資質を向上させていくための教員評価を取り入れた教員保障政策を導入していく必要があると考えられます。アメリカが100年かけて歩んできた道を、日本はこれから歩み始めることになります。まずは、先達の経験を取り入れていくEducation Borrowingが必要です。その上で、日米の教員文化の違いから生じる差異に対して長い試行錯誤を日本も繰り返していく事になると考えられます。大阪維新の会の教員政策自体は、先達の経験を無視している点は評価できませんが、長い試行錯誤の第一歩を歩みだした事は評価されるべきだと考えます。

最後に、アメリカからEducation Borrowingをする是非です。私は、データを示さず自分の経験から日本の初中等教育はダメだという人に関しては、その人物の頭の構造のダメさ加減を心配する立場を取るぐらい日本の初中等教育の質は高く、国際学力調査でも示されるように結果を残していると考えています。それに比べて確かにアメリカの初中等教育は結果を残せていません。しかし、アメリカの教育は日本と異なり極めて大きな被差別民を抱え、かつ大量の英語を母語としない移民の流入に晒されています。現在ですら移民の教育や被差別民の教育に満足に対処できていない日本の教育が、アメリカと同じだけの悪条件を抱えていたとしたら、少なくとも国際的にも高く評価される日本の良質な教育は維持できていないと思います。ゆえに、アメリカが日本の授業研究などを積極的にEducation Borrowingしているのと同様に、極めて立ち遅れている日本の教員保障政策がEducation Borrowingをする事は充分ありえることだと思います。



途上国の初等教育就学率も90%を超え国際教育協力分野でいつまでも私の仕事があるとは思っていないので、日本の教育がこれから乗り出す長い試行錯誤のプロセスにいつか何らかの立場から高度な専門性と経験を持って貢献できるよう、私自身も海外のアカデミアや国際機関でしっかり修行しようと思いました。
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