ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 若年ニートが及ぼす社会への経済的損失
2012年01月07日 (土) | 編集 |
The Economic Value of Opporunity Youthという、アメリカにおける若年層ニートによる経済損失額を短期・長期両方の視点から分析した興味深いレポートがあったので、ちょっと内容を掻い摘んでご紹介してみようと思います。

まず、アメリカの若年層(16-24歳)の中でニートと思われる人口がどの程度いるかを見ます。調査によってバラつきはあるのですが、少なく見積もってもアメリカの若年層の内17%はニートだと考えられ、その内の過半数は16歳から24歳の間に全く教育も就労もしない慢性的なニートだと考えられます。人口で言うと、若年層の670万人がニートであり、内330万人は慢性的なニートです。



次に、若年ニートによる経済的な損失ですが、これは次のいくつかの項目に分類されます→①働かない事による収入・税収減。若年非ニートの平均収入・納税額(学生の収入は0なので若年層の平均所得よりは随分低い値になります)から若年ニートの平均収入・納税額を引いた値が、若年ニートによる収入・税収減としてカウントされます。②犯罪によるコスト。若年ニート層の犯罪率は若年非ニート層の8倍以上に及びます。そのため若年ニート一人当たりの犯罪コスト期待値から若年非ニートのそれを引いた値が、若年ニートの犯罪によるコストとしてカウントされます。③医療費負担。若年ニート層はメディケアにかかる確率が非若年ニート層の5倍以上と医療費も多くかかります。そのため、若年ニート一人当たりの平均医療費から若年非ニート一人当たりの医療費を引いた値が、若年ニートの医療費負担として計上されます。④社会保障費。特に説明は要らないと思います。⑤教育費の節約。ニートは教育を受けずその分教育費を節約できるため、この点は若年ニートによる経済的な利得となります。ゆえに、若年非ニートの一人当たり平均教育費が逆に若年ニートによる経済的な利得として計算されます。⑥政府支出増による経済へのダメージ(Marginal Excess Tax Burden)。これはマクロ経済の教科書などを参考にしてみてください。

さらに、この若年ニートによる経済損失は社会全体の損失と政府財政の損失で考える事が出来ます。所得減+犯罪コスト(行政コスト&被害者コスト)+医療費+非公的社会保障費+政府支出増による経済へのダメージ-教育費(私的・公的)の合計が前者となり、税収減+犯罪による行政コスト+医療費+社会保障費(公的・非公的)-公教育費の合計が後者となります。

それぞれの項目で若年ニート一人当たりどれぐらいの損失が発生するかは次の通りです→①所得減9,760$・税収減1,680$。②犯罪の行政コスト11,370$・犯罪の被害額16,500$。③医療費2,380$。④非公的社会保障費430$・公的社会保障費360$。⑤政府支出増による経済へのダメージ1,540$。⑥浮いた私的教育費2210$・浮いた公教育費2,330$。

この結果、一年間に若年ニート一人が及ぼす社会全体への経済損失は37,450$(約300万円)、政府財政への悪影響は13,900$(約115万円)、となります。アメリカの中位数家計所得が49,500$なのを考えると、若年ニートがもたらす経済的な損失がいかに大きいかが分かるかと思います。



さらに、このレポートは若年ニートが若年層を脱出した後の(25歳以降)長期的な経済的損失も計上しています。割引現在価値で算出された各項目ごとのニートによる経済的損失額は次の通りです→①所得減392,710$・税収減105,500$。②犯罪の行政コスト13,700$・犯罪の被害額34,260$。医療費41,870$。④社会保障費9,660$。⑤政府支出増による経済へのダメージ7,230$・低学歴労働者による生産性の低下39,270$。

この結果、若年ニートが25歳以降に及ぼす社会全体への経済損失は52,9030$(約4400万円)、政府財政への悪影響は170,740$(約1350万円)、となります。

若年ニートが若年時代に及ぼす経済的損失と、25歳以降に及ぼす経済的損失の割引現在価値を足し合わせると、若年ニート一人当たりの社会全体への経済損失は704,020$(約6000万円)、政府財政への悪影響は235,680$(約1900万円)、となります。しかし、この金額は親の低学歴が子どもの学歴や健康状況に及ぼす悪影響を考慮に入れていない数字のため、実際の若年ニートによる経済損失額はもっと大きなものとなります。



ところで、この結果はどれぐらい日本においても妥当性があり、どのような教訓を持つのでしょうか?まず、若年ニートによる収入源・税収減ですが、日本でも学歴による収入格差は大きなものがあるためアメリカほどではない可能性はあるものの、アメリカと近い損害額は出ると考えられます。犯罪コストはアメリカよりは小さくなりそうですが0ではないと思われます。医療費負担・社会保障費はこれも学歴と健康・生活保護率に関係があるため、日本にも当てはまりそうです。

アメリカの高等教育の教育費の高さはかなり有名な所ですが、それでも若年層をニートに留めるよりも圧倒的に大きな便益を生み出します。以前日本の大学は多すぎるのか?で、日本の大学は多すぎるわけではないと論じましたが、このレポートが用いた算出手法をそのまま日本に適応すれば、日本で大学生が多すぎるのかどうかより明確に分かります。残念ながら手元にデータがないので予想の範疇は出ませんが、このレポートが最後に提言でまとめているように、日本でも若年層をニートやフリーター・派遣等の低スキル労働に押し留めるよりは、ポスト中等教育・大学・大学院で人的資本を蓄積させた方が社会全体にとって得なのではないかと考えます。

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