ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 高学歴女性と少子化
2011年12月02日 (金) | 編集 |
ニュースを見ていたら、異なる視点から日本の少子化について触れた記事が、偶然同じ日に掲載されていたので少し僕の専門分野のことも絡めて書いてみようと思います。

一つ目の記事は毎日新聞の止まらぬ少子化 産まないでなく産めないです。要点を掻い摘むと、女性のキャリアの問題、出産・育児のサポート体制が不十分、お金の問題、で完結出生児数(注;夫婦一組辺りの子どもの数。合計特殊出生率は女性一人当たりの子どもの数。)が2人を割り込み大変な事になっている、というものです。

もう1つの記事はBBCのJapan singletons hit record highです。僕が見たときは最も読まれている記事だったので、イギリス人はこんなのに興味を示すんだと少し驚きました。こちらの記事の要点は、日本は世界でも未曾有の少子化が進んでいる、日本の18-34歳独身男性の61%、女性の50%は恋人がいない、35-39歳独身の1/4は性交渉の経験がない、というものです。

前者は完結出生児数の低下が少子化の原因、後者は未婚化が少子化の原因、として記事を書いています。つまり、前者は現在の日本が結婚して子どもを産んでも育てていけるような環境にない事を問題視し、後者は現在の結婚適齢期の日本人が結婚・カップルにならないことを問題視しています。この事について女性の高学歴化を踏まえて少し考えてみようと思います。



まず、2つのデータを見てみようと思います。1つ目は、学歴別の合計特殊出生率の推移です。下の図は日本における教育別出生力の推移というレポートの表2を参考にしています。
99.jpg
確かに、この40年間で合計特殊出生率は減少しています。学歴という観点からは、女性の学歴が高くなるほど合計特殊出生率は減少し、かつ学歴による合計特殊出生率の差は年々拡大しています。しかし、特定のグループの合計特殊出生率は、そのグループの婚姻率にも左右されるし、事実高学歴の女性の未婚率が高いため、このデータだけでは、少子化に関して産まないのか産めないのかイマイチよく分かりません。

というわけで、上記のデータと期間は異なりますが、未婚の影響を受けない完結出生児数の変化を学歴別に見てみようと思います。これは、出生動向基本調査のデータを元に作成しています。
50.jpg

上記のデータから見えてくるのは、女性の高学歴化で確かに未婚率も上昇しつつあるものの、女性が高学歴になるほど夫婦一組あたりの子どもの数も減っており、高学歴女性を中心に子どもを産めない・産まない状況がある、という事だと思います。



高学歴女性が子どもを産めない理由はいくつかあるのでしょうが、僕の専門分野の中では人的資本論で有名なベッ
カーが学歴と子どもについて2つの理論を出しています。

一つ目は高学歴女性の放棄所得に関するものです。女性の高学歴化が進むと、これに伴って女性の賃金も上昇するため、出産・育児による放棄所得が大きくなり、完結出生児数が減少する、というものです。日本でも1985年以降、女性の大学進学率が高まり、かつ総合職への進出が進んだために、女性の出産・育児に関する放棄所得が大きくなった事は、とりわけ大卒女性層で、間違いないと思います。子どもを産み・育てるためには、現在の日本では放棄所得が大きすぎるために完結出生児数が減少した、という事ですね。その通りだとすると、高学歴女性の出産・育児に関する放棄所得をいかに減らせるか?が出生率向上の鍵になってくるので、毎日新聞の記事は結構的を得ている気がします。

もう1つは子どもの数と質です。子どもの人数と子ども一人当たりの教育費はトレードオフの関係にあるので、社会の中で学歴から得られるリターンが大きいほど、子どもの数を減らし子ども一人当たりの教育費を増やす、というものです。学校に行かせるよりも働かせたほうが利益が大きいのであれば沢山子どもを産んだ方が良い、というのは少し形を変えて途上国やアメリカでもアーミッシュのような伝統的な生活をおくる層の高い出生率に表れています。教育のリターンに関しては、学歴の高い層ほどそれを理解できるようなので、女性の高学歴化が進むと子どもの数を減らして一人当たりの教育費を増やそう、というメカニズムが働きます。



日本は教育システムがしっかりしていて学歴がsubstantialなリターンを生んでいるために、高学歴女性の放棄所得が高くなってしまうし、高いリターンを子どもに得させるべく一人当たりの教育費を増やそう、となってしまい少子化が進んでいると教育分野からは考える事ができます。教育システムを崩壊させてしまえば、高学歴女性の賃金が高くなることもなくなりますし、子どもに教育費をかけるよりも不動産や金融資産を残そう、となるので少子化に歯止めがかかるのではないでしょうか?

しかし、教育システムを崩壊させて出生率を向上させるのはあまり現実的な話ではないので、いかに女性の出産・育児にまつわる放棄所得を抑えられるか?が出生率向上の鍵になるのかなと僕は考えます。

保育所を整備して女性が働きながら育児ができる環境を整える、子どもを抱えながら働きやすい環境を整える、男性も積極的に育児に参加する、この辺りが出産・育児にまつわる女性の放棄所得を抑える有効な手段、と考えたのですがあんまりにも当たり前で、だったらとっくにこのイシューは解決されているはずでしょうから、ここに至って少子化の原因を誤認しているんじゃないかな、と不安になってきました。

ただ1ついえるのは、女性の高学歴化が進むと少子化が進む、というのは80年代で既に教育開発分野では常識だったにも拘らず、対策を立てることなく教育機会を拡大させたのは、政策間の連携の不備という事ですね。
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