ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 教育にお金をかけない日本政府①-OECDの日本カントリーノート(学歴崩壊?・国際学力調査・日本の教員は働き過ぎ?)
2011年09月16日 (金) | 編集 |
OECDが出版したEducation at a Glance2011のカントリーノートの内容についてマスコミが報じているようです。僕が見た毎日新聞の記事によると、

日本の08年の教育への公財政支出は、国内総生産(GDP)比3.3%で、経済協力開発機構(OECD)の比較可能な加盟31カ国中最下位だったことが、OECDが13日発表した調査結果で分かった。OECD平均の5%を下回り、前年(3.3%)に続く最下位。日本は公財政支出全体に占める教育分野の割合も9.4%で、OECD平均の12.9%を下回り、イタリアと並ぶ最下位。一方、教育支出に占める私費負担(民間からの奨学金など含む)の割合は、OECD平均(16.5%)の2倍以上の33.6%で、家計負担は21.3%だった。OECDは「どんなに教育にコストがかかっても、補って余りあるリターンが出る」、「教育政策が日本の長期的な経済的・社会的発展に対して重大な役割を果たす。OECDとしても支援を続けていく」と表明した。

というわけなので、日本政府は教育にお金をかけていないのか?日本の教育支出に絞める私費負担の高さについて色々数字を見ながら、何回かに分けて分析していこうと思います。前回のNY Timesの記事も書く書く詐欺ではないので、このシリーズが書き終わったら書いてみようと思います。最初に、OECDの日本へのカントリーノート(PDF)に何が書かれているのか?を簡単にまとめていこうと思います。



まずは、教育の経済効果に関する所から

・中卒の所得は平均して高卒の所得の80%しかない
・大卒は高卒よりも所得が平均して68%高い
・男性の高卒・大卒間賃金差が41%なのに対して、女性の高卒・大卒間賃金格差は91%に及ぶ
・男性:高卒の失業率6.4%→大卒の失業率3.1%、女性:高卒の失業率5.3%→大卒の失業率3.3%
・日本の成人の44%が高等教育を修了、若年層はさらに高く世界でもトップレベルに教育された労働力を持つ国

メディアではちょくちょく学歴崩壊みたいな単語を見かけますが、このデータから見ると、日本もアメリカのように受けた教育段階が高くなるほど所得が高く失業率は低くなっており、いわゆる「学歴崩壊」という事実は妥当でないようです。起こっていない事実をでっち上げるぐらいのデタラメ発言なので、学歴と学校歴を混同して、学校歴崩壊を「学歴崩壊」としているのかもしれませんが、いくつかの研究結果を見ると、学校歴と所得の間には正の関係が見出される事から、いずれにしても日本では「学歴崩壊」という現象は起こっていないようです。

ジェンダーは仕事でやっているのですが、労働経済を勉強したわけではないので、1つ興味深いけど分からないのが、高卒の労働者の間では失業率が男性>女性、なのに対して大卒の労働者の間では失業率が男性<女性、と男女の失業率が学歴によってひっくり返る点です。学歴別労働参加率なんかを見てみると答えが見えてきそうな気もしますが、ちょっとデータが見当たらないので僕には理由がはっきりとは分かりません。



次に国際学力調査、PISAの結果にも言及しています。

・国際学力調査における水準は向上し、順位も前回の12位から5位に上昇している
・低成績層の割合が低い
・日本での、親の所得・社会的背景と子どもの学力の関係は、OECD諸国の平均並である
・不利な社会・経済的背景の子どもが好成績を収めるケースが日本はOECD諸国よりも多い
・親が高卒未満の学歴だと子どもの成績も悪くなりがちだが、日本にそのような生徒は1.7%しかいない

こんな感じだそうです。国際学力調査の結果なのですが、ゆとり教育世代と言えども結果は改善しています。最近のゆとりは…なんて言説もちらほら見ますが、データも見ずにそう言い切ってしまえる程度の頭の人の周りにはそれ相応の人しか集まらず、それが「ゆとり」に見えるというのが事の真相だと僕は考えています。

次に、低成績層の割合が低い点なのですが、確かにPISA調査の下から3ランクに該当する者の割合は低いのですが、最低ランク該当者の割合がちょっと高いあたりは気になります。あと、日本は不利な社会経済的背景の子どもが好成績を収めるケースが多い点はデータ通りだと思います。アメリカの高等教育でのアファーマティブアクションに近い政策を絶賛するアメリカの大学に滞在した事がある日本人が絶賛しているのをちらほら見かけますが、そもそもアメリカはその地域の平均所得が公教育費に直結してくるし、入試でエッセイや推薦状などを課されるので、日本のセンター試験・二次試験と違って、文化資本の差異が如実に出てくると考えられます。もちろん改善の余地は大いにありますが、親の社会・経済的背景と子どもの学力、に関しては日本は世界的にも結構頑張っている方だと僕は思います。



その他に関しては次のように言及されています

・日本の高等教育機関に在籍する外国人学生の数はこの10年で倍増、現在では在学者の3.4%が外国人である
・全世界の留学生のうち、2000年には3.2%を、2009年には3.6%を日本が受け入れている。
・留学生受け入れシェアは、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、フランス、カナダ、ロシアに次いで8番目
・日本の教員の授業時間はOECD諸国平均よりも短いが、法定勤務時間は長い

日本に来る留学生が増えているみたいですね。高等教育は不勉強なのでそれほど詳しくないのですが、この10年間の全世界的な中国人留学生増加の恩恵を受けているだけ…というのはちょっと穿った見方かもしれませんね。

日本の教員の授業時間は短いのに法定勤務時間が長く事務作業が多過ぎるのではないか?と考えられるかもしれません。確かにこれは正しいです。しかし、OECDが言及している数字にはからくりがあって、日本はOECD諸国の中でも少数派の、長期休暇中も勤務時間が割り当てられている国なのです。これが授業時間の割りに法定勤務時間が長い大きな理由です。次回の教育財政のの時に詳しく言及しますが、日本の小・中・高の教員の給与はOECD諸国の平均よりも高く、政府が進める様な少人数学級の導入(=教員数の増加)には耐えられない教員給与システムになっています。日本も他国のように長期休暇中は教員を法定勤務から開放し、その分給与を下げる等の工夫をしないと少人数学級の導入は厳しいんじゃないかな、と僕はふんでいます。

というわけで、次回から何回かに分けて、OECDのEducation at a Glance2011の日本に対するカントリーノートの教育財政の側面を、具体的な数字と各国との比較を交えつつ考えていきたいと思います。

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