ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 教育にお金をかけない日本政府④―日本の教育支出はどこを改善すべきか?
2011年09月25日 (日) | 編集 |
今回は日本は教育セクターのどこに誰がどの程度支出していて、それはOECD諸国と比較してどのような課題を浮き彫りにしているのか?について書いてみようと思います。

下の図は、政府の教育支出のうち何%が就学前教育・初等教育・中等教育・高等教育、に割り振られているか?を示しています。教育予算の多くを就学前教育に割いている国順に並べてみました。
abcd.jpg
平均的には、教育予算の10%程度を就学前教育に、30%弱を初等教育に、30%強を中等教育に、30%程度を高等教育に投資するという感じですが、国によって教育の発展度合いも違うし、経済発展の度合いも違うし、国家政策も違ってくるので一概にこうあるべき、というのを示すのは少々難しい所があります。一般的には教育システムが発展するほどより高次の教育段階のシェアが増加し、教育システム同様に経済が発展するほどより教育を受けた労働力が必要になるのでこれも高次の教育段階のシェアを増加させる傾向があります。

日本を他国と比較してみると3つの特徴を挙げる事ができます→①就学前教育には殆ど投資していない、②初等教育に重点的に投資している、③高等教育への投資がやや少ない、という3点です。何だかんだ言っても日本は世界的に見たらとても豊かな国であること、高等教育の就学率が世界でもトップレベルにあるぐらい教育システムが発展している事を考えると、③のポイントが気になるところではあります。



では、さらに具体的に、他国と比較した場合日本は各教育段階に対してどれぐらい投資しているのか?を見てみようと思います。まずは就学前教育からです。前回の記事同様国名の下の数字は当該教育段階の全教育支出に占める公教育支出の割合です。
スライド2
最初の図で日本政府は教育支出の中でも就学前教育には殆ど割いていない事を示しましたが、これが就学前教育の総支出にも反映されて、OECD諸国の中でも最下位に近いところに位置しています。さらに、就学前教育における私的負担の割合は最も重いです。私的負担の割合の高低は一概に良い悪いが言えない事は前回のエントリーでも書きましたが、就学前教育への支出がOECD諸国と比較してもかなり低いのにそれを公的支出がカバーできていない、というのは問題視されるべきだと思います。

ここからは推測や想像の話になりますが、日本が国際学力調査において、平均点は良いのだけれどもレベル1・2に位置づけられる低学力児が多いのは、就学前教育に対する支出が少ないのも一因じゃないかなと思いました。就学前教育は①その後の学力に対して影響があり収益率も最も高い、②不利な子どもにほどその効果が大きい(家庭環境がしっかりしている子どもは就学前教育に行かずともしっかり教育されている)、というのが先行研究で明らかになっています。この就学前教育の効果と日本の就学前教育に対する支出を見ると、最も不利な家庭環境にある子どもが良質な就学前教育を受ける事ができず小学校の出だしで躓いてしまっているのではないか?と思いました、あくまでも推測と想像の粋を出ませんが…。

いずれにしても、日本は就学前教育への支出がかなり少なくかつ私的負担の割合も相当重くなっているので、最も不利な背景を持つ子ども達への良質な就学前教育の提供を柱に、就学前教育への公教育支出を増やす必要があると考えられます。



次に初等教育です。
スライド3
初等教育への支出も確かに下位には位置するものの、就学前教育や教育全体への支出に比べると、日本は際立ってOECD諸国の平均よりも低くはない、と言えると思います。

気になる点と言えば、今後少人数学級を小学校の全学年に導入しようとしている事でしょうか。少人数学級は低学年と低学力層には効果があるという研究が見られます。しかし、教育段階が低いほど教育支出に占める教員給与の割合は高くなり、初等教育だと教員給与が教育支出の8割程度を占める国も多々あります。このため、教育気前項かに対してコストが見合わないことが多く、特に日本は小学校の教員給与は一人当たりGDPの1.5倍近くと他の国々と比較してもかなり高コストなので気をつける必要があると思われます。

初等教育では公費負担の割合が99%とかなり高い上に、公教育支出が少ないわけではないので、今後は如何に高所得層からのプライベートリソースを引き出しつつ、少人数学級を導入していくかが鍵かなと思います。



次に中等教育です。
スライド4
ここでも日本は最下位に転落しています。初等教育はそうでもないのに、中等教育の支出がOECD諸国と比較して少なくなっているのには大きく言って2つの理由があります:①技術・職業教育が少ない。日本の中等教育での技術・職業教育の割合が12%とOECD諸国の中で最低である点。普通教育と技術・職業教育を比べると、普通教育の方が圧倒的にコストが小さい(技術・職業教育は施設・設備費が高い)ので、技術・職業教育の割合が低いという事は必要な支出も小さい、という事を意味します。②教員給与。世界には小学校・中学校・高校で教員給与が同じ国と、教育段階が上がるほど教員給与も高くなる国の2種類が存在していますが、日本は前者です。そのため、他国と比較すると初等教育への支出は相対的に大きくなるのですが、中等教育への支出は相対的に小さくなってしまいます。

このデータには高校の無償化が反映されていないので、今後中等教育への公教育支出が増加し私的負担の割合が減少していくものと考えられます。中等教育への支出が少ないので支出額そのものを増やす必要はあるのですが、プライベートリソースをクラウディングアウトさせるべきではないので、わざわざ私立学校の生徒にも年額12万円出さなくてもいいように僕は思うのですが…。



最後に高等教育です。
スライド5
高等教育では日本の支出額はOECD諸国と比べても多い方に分類されます。問題は極端に高等教育での私的負担が高い事と、やはりアメリカに比べて高等教育への支出がかなり少ない所でしょうか。前者については研究への公的支出の増加や低所得層への奨学金(学生の支援には、グラントの奨学金・低利の教育ローン(ある程度の援助効果はある)・普通の教育ローンがある。)といった方法で高等教育への公的支出を増やす必要があるでしょうし、後者についてはイギリスやアメリカのように、私費での留学生が日本に来てくれるよな対策を講ずるなど高等教育への新たなリソースの開拓を行う余地はあるかなと思います。



以上まとめると、日本は教育への支出が少ないのですが、特に就学前教育への支出を公的支出を中心に増やす事、高等教育への公的支出を増やしつつ新たなリソースも開拓していくこと、この2点が最も大事な事だと僕は考えます。さらに付け加えると、教育政策は、より早期により不利な環境にある子どもに介入していくことが基本だと考えられるので、より早い教育段階でより不利な環境にある子どもに届くように公教育支出を増加させていく事が必要かな、と思います。



ここまで日本の課題を書いてきましたが、次回はまとめとして日本の教育財政がOECD諸国と比較してどうなのか、少し書いてみようと思います。

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