ジンバブエでの生活の事や途上国や日本の教育政策の事について書いています(ここでの見解は個人の見解であり、所属団体の見解ではありません)
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 TOEFL導入の報道から日本の英語教育について思った事
2013年03月28日 (木) | 編集 |
最近気になったニュースの一つに、自民党の教育再生実行本部が大学入試にTOEFLを活用する方針を固めた、というのがあります。僕は語学教育の専門家ではないので、大学入試の英語がTOEFLに置き換わるとどうなるか?というのは良く分かりません。ただ、大学入試へのTOEFL導入とほぼ同時期に国Ⅰの採用試験でもTOEFLを活用するという話まで出てきていて、さすがにちょっと違和感を感じたので、少しそれについて書いてみようと思います。



大学入試でも基本的に外国語といえば英語だし、キャリア官僚の採用に際しても英語力を見るTOEFLを活用する程(大学時代に語学で可しか取った事がなく、むしろ必修の英語に至っては「不」可を取って留年しかけたような私でさえ、もう5年間も国際機関で働いているのですから、日本で官僚になられる優秀な方々なんて、別にTOEFLなんか課さなくても業務で英語を使わせれば直ぐできるようになると思うのですが…)、日本では数ある外国語の中でも「英語」のみが突出して重要視されています。ただ、学生のほぼ全員に学ばせたり、国を背負って立つキャリア官僚候補生の方々全員に課すほど、英語の重要度は高く、その重要性も増加傾向にあると言えるのでしょうか?正直、私の主観ではそこまでするほど英語の重要度は高くないという印象なので、話者人口・公用語とする国の経済規模の点から、日本の英語教育について少し考えてみようと思います。

まず、世界主要11言語の話者人口を見ていこうと思います。データはEthnologueというサイトから引っ張って来ました。
プレゼンテーション1
上の図は、世界主要11言語についてそれぞれを第一言語としている人口の推移を表したものです。中国がダントツの一位で、約12億人が第一言語としているだけでなく、図には載せませんでしたが、中国語を第二言語とする人口も、第二言語人口の中で最多で、約1.8億人が中国語を第二言語としています。ここジンバブエでも見かけるし普段のお買いもので大変重宝させて頂いているのですが、世界中に華僑が散らばっているのを見るとさもありなんといった感じでしょうか。

英語はというと、世界第三位の話者人口を誇り、その数は約3.35億人となっています。英語を第二言語としている人口もかなり多く、約1.7億人もいます。確かにこの英語話者の人口を見ると、日本で英語がとても重要視されるのも分かるような気になって来ます。

他に注目すべき言語として、スペイン語、ヒンディー語、アラビア語、ポルトガル語、の4言語を挙げる事ができます。これらの4言語は、このわずか15年ほどの間で第一言語とする人口が約20%以上も増加している言語です。この4言語の中でも特に注目すべきはヒンディー語とアラビア語です、これらの言語は、それぞれ1.2億人、2.5億人という莫大な人数が第二言語として使用しています。この2つの言語を駆使する人口は直に英語を使う人口を追い抜くでしょうし、スペイン語に至っては、近い将来アメリカ国内でスペイン語を話す人口が英語を話す人口を上回るという話が象徴的ではあるのですが、英語との差をどんどん離していく事でしょう。



次に、主要11言語を公用語とする国々の経済規模についても見ていきます。公用語が2つ以上ある国をどうやって分類すればよいのか良い方法を思いつかなかったので、公用語が2つ以上ある国についてはそれぞれの言語でカウントしてみました(例:シンガポールのGDPは中国語でも、英語でもカウントされています。)。アメリカのように首都の公共交通機関でさえスペイン語が使われる位の国を英語のみでカウントするのは若干気が引けるのですが、広く使われていても公用語ないしはそれに準じる立場にない場合はその言語からは排除しました。といった理由から合計すると100%を超えているかもしれませんが、ラフな経済規模として見てもらえればと思います。GDPのデータはかつての私の勤務先である世界銀行のWorld Development Indicatorsから持ってきています。
プレゼンテーション1
上の図は、各言語を公用語とする国々のGDPが世界全体のGDPに占めている割合を示しています。グラフから一目瞭然なのですが、改めてみると英語が圧倒的に強い事が分かります。ただし、1985年を頂点として、だんだんその割合を減らしてきている点に注意が必要です。この主な要因として、他の言語が経済規模を伸ばしている点が挙げられます。やや上のグラフではそれが分かりづらいので、英語を除いたグラフを下に用意しました。

プレゼンテーション1
この10年ちょっとのトレンドを見ると、フランス語・ドイツ語の経済規模はほぼ横ばいからやや減少傾向にあるものの、中国語の経済規模が爆発的に成長し、スペイン語・ポルトガル語・ロシア語・アラビア語・ヒンディー語といった言語の経済規模も手堅く成長してきています。これは、世銀の本部にいた時に肌感覚で感じられたのですが、南米の多くの国が高中所得国になってきているように、スペイン語が主に使われる南米の経済がかなり成長してきています。さらに、中国語・ロシア語・ポルトガル語・ヒンディー語を使うBRICs諸国も急速な経済成長を成し遂げ、リーマンショックや中東の春の影響を受けたもののドバイに象徴されるようにアラビア語を使う中東の経済成長も目覚ましいものがあります。



かなりラフに英語話者人口と英語を使う国の経済規模の割合とその推移を見てきましたが、冒頭の私が感じた違和感の所へ話を戻していきたいと思います。大学受験へのTOEFLの導入や、国ⅠへのTOEFLの導入に見られる様に、近年日本で急速に英語教育への注目が増しているように感じられます。英語圏が強かった1980年代や90年代にこの流れが起きるのならまだ理解できるのですが、2010年代になってこのような流れが起きるのはやや解せない所があります。

丁度私が世界銀行を去る前に総裁が交代したのですが、世銀の総裁選ではこれまで代々白人のアメリカ人が無風で当選してきたそうです。しかし、今回の総裁選では途上国から対抗馬が立ち、アメリカも韓国系アメリカ人を立てざるを得ない状況になりました。また、私が働いていた部署のDECのトップも代々先進国出身の白人の方ばかりだったのですが、私が働いていた時期に初めて途上国からリクルートされてきた方が就任されました。これらが私の世銀時代の印象を総括するような出来事だったのですが、世銀の本部で4年間働いてきた肌感覚として、非欧州・非アメリカ、ひいては非英語圏の台頭が物凄い4年間だったなという印象があります。昨日合意されたBRICs開発銀行の設立のニュースなんかも象徴的な出来事ですね。

どんどん多角化して行くこの世界にあって、教育や官僚採用において色々な言語ではなく未だに英語に一点張りする日本の姿は、この10数年で世界シェアを急落させた姿とも重なって見え、さらに凋落して行くのではないかと心配になりました。ひょっとしたら、英語教育に力を入れたグローバル人材の育成というターゲットは、英語圏の今後によっては、ただ日本語・英語圏で働けるだけのローカル人材の育成に終わってしまう可能性すらあります。

10数年後世界がどうなっているか?と言われても全く予想がつきません。ひょっとしたら英語圏が盛り返しているかもしれないし、中国・南米・中東、ワンテンポおいてフランス語圏アフリカが急速に成長してどんどん英語圏のシェアを削っていくかもしれません。少なくともリスクの高い英語教育一点張りをするよりは、リスク分散のために英語以外の言語を学ばせる層や官僚を作っておいた方が安全ではないかなと思います。まあ、国際機関はかなり多文化共生を重視しているので、国際機関以外で働いた事が無い私のバイアスがかかったただの杞憂で終わってくれればそれはそれで良いのですが。。。
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コメント
この記事へのコメント
TOEFLを導入するべきか否か、という問題はともかくとして。
各国のいわゆる「エリート」と呼ばれる人々に一番浸透しているのはやはり英語でしょう。
大学レベルの教育を受けてる人であればどの国、どの地域の出身者でも英語はほぼ確実に通じますが、他の言語でそれだけ普及しているものはまだ無い訳ですし。
加えて、学術用語としての発達に関しても英語(とフランス語、ドイツ語)と新興言語にはまだかなりの差があります。英語で読める論文と中国語で読める論文、注目に値するものが多いのはどちらかと言われればどう考えても前者ですし。
…もっと言ってしまえば、今日の科学(法学、経済学、工学、化学、生物学、等)を学ぼうとしている人間にとって、中国語やらヒンディー語やらが英語ほど役に立つとはとても思えません。
2013/03/29(金) 00:24:27 | URL | #-[ 編集]
Re: タイトルなし
英語が一番浸透しているというのはデータ的にもそうですし、その通りだと思います。ただ、最も浸透しているから全ての人に課すべき、というのは誤った考え方だと思います。8割の官僚に英語を習得させたとしても、少なくとも残りの2割には英語以外の言語も出来る人材が欲しい所ではないでしょうか?

また、「エリート」に浸透しているというのは否定しようがありませんが、ある国に行ってエリートとだけで仕事を終えられるのは、せいぜいアカデミアと金融機関ぐらいではないでしょうか?アカデミアと金融機関が占めるパイなんてたかがしれているので、たとえエリートに浸透している言語が英語だとしても、グローバル人材育成を考えた場合に、英語100%だとかなりグローバル展開に支障をきたすと思いますよ。

> TOEFLを導入するべきか否か、という問題はともかくとして。
> 各国のいわゆる「エリート」と呼ばれる人々に一番浸透しているのはやはり英語でしょう。
> 大学レベルの教育を受けてる人であればどの国、どの地域の出身者でも英語はほぼ確実に通じますが、他の言語でそれだけ普及しているものはまだ無い訳ですし。
> 加えて、学術用語としての発達に関しても英語(とフランス語、ドイツ語)と新興言語にはまだかなりの差があります。英語で読める論文と中国語で読める論文、注目に値するものが多いのはどちらかと言われればどう考えても前者ですし。
> …もっと言ってしまえば、今日の科学(法学、経済学、工学、化学、生物学、等)を学ぼうとしている人間にとって、中国語やらヒンディー語やらが英語ほど役に立つとはとても思えません。
2013/03/30(土) 04:15:33 | URL | RED #-[ 編集]
コンプレックスの裏返し
 海外に出て行って、言語がわからない・使えないというのは、ものすごい疎外感を感じるものです。それが英語となると、なまじっか習っているものだから、疎外感にプラスして敗北感というか強烈なコンプレックスに苛まれるということはあると思います。
 政財界のエラい方々は、当然若い頃から海外に行く機会も多かったことでしょう。で、そこでの諸々の経験=コンプレックから、英語英語と熱を上げるに至ったんじゃないでしょうかね。
2013/03/31(日) 21:32:58 | URL | shira #-[ 編集]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
2013/10/24(木) 21:42:37 | | #[ 編集]
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